Page14.ある日ある時の酒飲み日誌(江戸の冬ごっこ)

 

鍋!こたつ!熱燗!

半纏も買ったし、準備は万端。

 

 「今年の冬は江戸の冬ごっこがしたい」

そう言ったはいいものの………

 

ブラウザに表示されたamazon.co.jp。カタカタと軽快にキーボードを打つ。

 

 

『鬼平犯科帳 DVD』

 

「に、にじゅうよんまんえんだと……!!?」

 

大卒の初任給かよ。

レンタル店に行くには微妙に遠い。この際DVDを買ってしまったほうが心のもやも晴れるのでは、と考え付いたが甘かった。

 

「と、とにかく鍋だ!酒を飲めば気分は江戸だ!」

と、食べ物に逃げる。

 

私は鍋では常夜鍋が好きである。ほうれん草と豚肉の鍋だ。

ふと名前の由来を疑問に思いwikiで調べてみると、毎日食べても飽きないから常夜鍋、と出てくる。そんなことよりこれ明治以降からですね(江戸じゃねえ)

 

カセットコンロに一人用の鍋を用意する。この日のためにリサイクルショップで200円くらいで買った河豚の絵の描いた鍋だ。

同じ日に徳利とおちょこのセットも買った。

 

熱燗ってのはなあ、特に普段はやらねえな。

 

クックパッドを見ながら湯煎で燗酒を作る。

完全にエセ江戸である。イメージだけで進んでいる。

これできせる煙草でも出してきたら完璧かもしれないが、賃貸なので煙草は吸えない。

きせるは…持ってるんだよ…… だけどな、退去費用がこわいんだよ………

 

さあて鍋の湯が煮えてきた。踊る昆布。

具材は豚肉、ほうれん草、しいたけ、もやし、豆苗、油揚げ…と、好きな具材を好きなだけ。

そしてピーラーでスライスしたひらひらの人参にひらひらの大根ときたら

一人鍋パのはじまりだ。

 

あっさりポン酢に七味が香る。つまみにもなるし、締めにもなる。

鍋にも酒をついでやって、ほれ一献。

 

あとは池波正太郎なんかに思いを馳せちゃって、幸せな気分のまま寝るだけよ。

(江戸時代のこたつだったらしぬよね)